1.油脂及び油脂食品の劣化機構の解明と、その評価法と防止法の開発
食品に含まれる油脂の劣化は、食品の品質に影響を及ぼします。油脂の劣化は、主に酸化によって引き起こされます。当研究室では、油脂の劣化機構を明らかにすると共に、劣化度を評価する方法の開発や、劣化を防止する方法の開発に取り組んでいます。その成果の一つとして、油脂を用いたフライ調理で生じる刺激臭により調理する人の気分が悪くなる「油酔い」の原因について、企業と共同で取り組み、「油酔い」の原因物質がアクロレインと呼ばれるアルデヒドで、油脂を構成する脂肪酸の一つであるリノレン酸から生じることを明らかにしました。また、油脂のフライ調理による劣化の指標として、「カルボニル価(ブタノール法)」を開発しました。
2.食品の品質評価法の開発
食品の品質を評価することは、食品の安全を確保する上で重要です。当研究室では、食品の品質を迅速かつ簡易的に評価する方法の開発に取り組んでいます。その成果の一つとして、微弱な化学発光を測定することで酸化防止剤の効力や魚肉の劣化度を評価する方法を開発しました。また蛍光を測定することによりタンパク質を多く含むきなこや凍り豆腐などの乾燥食品の劣化度を評価する方法を開発しました。現在は、核磁気共鳴分光(NMR)法による油脂に含まれる微量な生理活性成分の定量を行っています。
3.機能性油脂の開発
魚に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は血中の中性脂肪を低下せるなど特異的な健康機能を有することから医薬品や機能性食品に応用されています。当研究室でも、健康機能をもった新たな油脂の開発に取り組んでいます。その成果の一つとして、かや油に肝臓や血中の中性脂肪を低下させる作用のあることを見出しました。またこの作用は、かや油にのみ多く含まれるシアドン酸(C20:3)と呼ばれる脂肪酸によることを明らかにしました。